北辺
第七節
 半ばまで融けかけた雪を携え、ダークネスをコアに乗せ、砂漠商都へ向かうテトテトラ。
 そういえば、シェハーダタには輸送艦用の発着場なんてものがあるらしい。
 それから――オペじいから聞いた話だと、沙魅仙が『ワールドマーケット』なる特産品バザーを開催する構想を練っているらしい。
『色々出るんだよね。雪と珍しいもので物々交換できる?』
 集まる情報と、集まる人……
 バザーって、物以外を売り出すのも、ありなんだろうか?
 きません――機(き)動魔(ま)閃(せん)護撃士団の略称らしい――に、対侵略者とは別に、対魔物被害相談や機動生命体派遣所の側面があったら、みんな助かるだろうか?
『ネスは万屋なんだよね』
「まぁ、そうだな」
『お手伝い斡旋事務所とか、あったら便利?』
「あぁ、受付場所を作っちまうわけか」
 構想自体は、悪くはないかも知れない。
 紺藍色の中で、紫煙をくゆらせながら、長身は暫し、己の内側へと思考を沈ませる……

 ジョナサンと行く! 〜奈落の口・極地から極地往復ツアー〜
 ……を終え、再びメナスへと戻ってきたラスティ。
 調べてる最中にもっとでっかい銀色のも飛んでた! と興奮気味に語る彼に、ああ、たぶんディアナ・ルーレティアかなぁと、良いの回った頭で考えるみちる。
「あれっ。名無しは?」
「……あんたの部屋で寝てる」
「何でだよ!?」
 どうやら、親父である酒場の店主と仲良くなって、息子も出かけてるし使え使え、となってしまったらしい。そして、それを「ま、いいか」で済ませてしまう息子も中々のものである。彼はきっと、西の森での衝撃体験から生き延び(?)て、一回り成長したのだろう。主に鋼の心臓の強度が。
 何はともあれ、初めて出会った異星人、初めて見聞きしたメナス以外の世界に、ラスティの世界への憧れは益々膨らむ。
 街を出ようかなぁ。
 どうしようかなぁ。
 より強くなったそんな思いを感じながら、青年は白く染まった南の地平に沈む陽を、窓越しにじっと眺めるのだった。
【第六節】   <<   【第七節】   >>   【文末】